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そらはかゆい。

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■物語り風ショートストーリー
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■そらはかゆい。
 
 
そらはかゆい。
 
かゆいほどの空。
 
あっけらかんとして、
 
さわやかで。
 
なんだか虐めたくなる。
 
 
 
ぼんやりとそんなことを考えながら、シキは眩しさに目を細めた。
 
多分これから、雨が降るだろう。
 
ざまーみろ、こんな清々しさなんて、長く続かないんだから。
 
 
 
そうして睨むように右手の遠方に首をまわす。
 
左も同じく。
 
前も。
 
 
蝉や小鳥の鳴き声ばかりが相変わらずうるさく耳に届いていた。
 
人は、いないようだ。
 
 
人気のない昼下がりの住宅街の裏道は、シキを孤独の妄想へと引きずり込む。
 
 
 
まるで、あたしだけ、この世界においていかれたみたい。
 
 
 
鮮やかな日照りの、大きな文明を持つ世界の、
 
突然に訪れた空虚。
 
 
 
くうきょ。
 
 
 
風にそよぐ木々の葉のこすれる音。大きく感じる。
 
あたしが素直でいられるのは、この世界の中だけだろう。
 
 
 
瞼を閉じ、そっと開くと、もうそこにはただの現実しかなかった。
 
 
 
飼い犬によく似たおばさんとすれ違う。
 
遅刻常習犯の女子高生に追い越される。
 
 
 
いつの間にか頬を伝っていた汗が、
 
ぱたりと地面にたれた。
 
それに気づいたシキの目に一匹の蟻が地面を這っているのが見えた。
 
嫌悪感をむき出しにして睨み付けると、シキは力を込めて足を振り下ろした!
 
 
 
タン、と、乾いた音が、あたりに響く。
 
 
 
この事に、誰も気づくことはない。
 
住宅街の裏道には、相変わらず生き物たちのさえずりが響いていた。

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