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大空の風

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■物語り風ショートストーリー
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■大空の風
 
 
大空を、大地を駆け抜ける風。
その風にさらされる青々とした大地。
その大地の一角の小高い丘の上に、この一帯を総べる遊牧民の、若者の影がふたつ。
 
二人は抜きぬける風の中、ただただ無言で遠方を臨んでいた。
 
やがて一方が口を開く。
 
「本当に行くのか」
 
そう問われた側が、ちらりと一度視線を向け、
 
「ああ」
 
と応えた。
 
「ヨル、みんなが悲しむ」
 
「構わない」
 
即答され、唇を噛む。重苦しげな表情には、わずかに焦りも見て取れた。
 
再び訪れる沈黙。
 
 
ヨルが口を開く。
 
「ずっと、小さい頃からの夢だった」
 
「小さい頃から、外の世界に憧れていた。あの山を越えた先に何が見えるのか、あの川をくだった先に何が待ち受けているのか、知りたくてたまらなかった」
 
一呼吸おいて相手を見据え、言葉を続ける。
 
「それは、ディン。お前が一番よく知ってる」
 
ヨルと目が合う。そらすことが出来なかった。
 
「俺たち二人ならなんだってやってこれた。今までだって、これからも。だからどこにも行く必要なんてない。どこにも行くな」
 
ヨルの瞳に悲しみが浮かぶ。
 
「…すまない」
 
相棒の決意は固いようだ。ディンは苦しながらもそう感じた。
 
俺は、どうすればいい。どうすれば。
 
ヨルがそっと口を開く。
 
「いずれ、ここへ戻ってくるよ」
 
ヨルの優しさからでた言葉だ。だからこそ、信用できなかった。
 
「ヨル…!」
 
「止めないでほしい」
 
ヨルは悲しげに微笑むと、その一歩を踏み出した。
 
 
大地を、風が駆けた。
二人の間を、どこまでも遠くへ。
 
こらえた涙を頬にこぼしながら、ディンは精一杯叫んだ。
 
「また会おう!また会おう、ヨル!」
 
遠くなった背中が、振り返り、手を振った。
ディンはそれにめいいっぱい両手を広げて応えた。
 
 
大地を吹き抜ける風は、何を運んできてくれるのだろうか。
 
ヨルは何を見、聞くのだろうか。
 
それは二人にはまだ分からない。ディンは願う、願わずにはいられなかった。
風が、全てを運んできてくれることを。

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