コモロとシャボン玉
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■物語り風ショートストーリー
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■コモロとシャボン玉
■物語り風ショートストーリー
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■コモロとシャボン玉
みどりがみずみずしく弾く、新春の、少し肌寒く、少し暖かな森の中。
コモロは小さな、シャボン玉に出会った。
それは青々とした緑をより色鮮やかに反射し、
きらきらとゆらめいては、
また新たな緑を大空の色と重ねて、
うっとりと色を変えるのだった。
そばにあった半透明のふきの葉をちぎりとると、
コモロは薄汚れた手のひらで、そうっと慎重にシャボン玉を包んだ。
そうっと、そうっと、壊れぬように。
そうしてできたふきの葉を大事そうに両の手で持つと、
コモロは家へと走り出した!
風よりも早く。
景色は遠のいて。
コモロは勢いよく家のドアを開けると、
ダイニングテーブルの上にそっと丸めたふきの葉をおろした。
そうして今度は慎重に、あの半透明のふきの葉を開きにかかる。
そうっと、そうっと、壊れぬように。
コモロははっとした。
シャボン玉は、消えていた。
つかの間、まるで時間が止まったようだった。
コモロは寂しく、クルルと鳴いた。
シャボン玉は消えた。どこかへ消えた。
あの色鮮やかなシャボン玉は、どこへ消えてしまったのだろうか。
コモロはちょっと考えたが、全く想像がつかなかった。
コモロは再び、クルルと鳴いた。
今度はちょっと、不思議気に。
そうして窓の外の夕暮れに目を向けると、コモロはひとり、
夕食の支度を始めるのだった。
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