記憶を失った少年
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■物語り風ショートストーリー
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■記憶を失った少年
■物語り風ショートストーリー
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■記憶を失った少年
心地よい、水のせせらぎで目が覚めた。
ぼうっとする頭を押さえ、あたりを見渡す。
ここは、どこだ?
小さな滝が目に入った。
どうしてここにいる?
覚えているのは記憶の断片ばかりで、
重要な、確かな何かを思い出せない。
頭をこすりながら、少年は立ち上がる。
体は重く、久々に歩いたような気分だった。
「うう・・・」
思わずうめきが漏れ、数歩進んだ足が止まる。
見上げた空には太陽が高く上がっていて、どうやら今は昼時のようだ、
とぼんやり思った。
周囲を見渡し、自分の荷物らしきものを探す。
大振りの、リュックが見えた。
少年は少し考え、その荷物を漁ることにする。
自分につながる何かが、あるかもしれないと思った。
中には手製の書きかけの地図、不思議な文様の象られたコンパスなど、
おおよそ旅人が持っているだろうものがごろごろと入っていて、
自身につながるものは入っていないようだった。
諦めよう、そう思ってポケットに手を当てた瞬間、わずかなふくらみがあるのに気付く。
少年はそうっと、ポケットの中身を取り出す。
それは、しわくちゃになった1枚の写真。
二人の少年が写っている。
これは、この景色は、この少年たちは。
「あぁ…」
安どのため息が漏れる。
思い出した、思い出したよ・・・
「ありがとう、ディン・・・」
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