朝露を集めに
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■物語り風ショートストーリー
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■朝露を集めに
■物語り風ショートストーリー
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■朝露を集めに
小さな丘の茶畑に、小さな人影がひとつ。
目覚めたての町の まだしんと冷たい朝の片隅に、その丘はあった。
人影はかじかむ手にふうと息を吹きかけ いそいそと手をこすり合わせる。
白い息が、静かに上空へと消えていく。
人影はふとその空を見つめ、しばしその薄青に見入っていたようだった。
だがすぐに下を向くと、そのかじかんだ指先で慎重に茶葉を持ち上げては、
その上のわずかな朝露を、せっせと小瓶へと集めていった。
小瓶には、まだたくさんの余裕があった。
たくさん、たくさん集めなくては。
やがて町に人影が溢れ、街並みに活気が出始めた頃、人影は大通りへ続く緩くくねる小道を帰って行った。
首から下げた小瓶に、輝く朝露をいっぱいに詰めて。
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