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コモロとシャボン玉

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■物語り風ショートストーリー
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■コモロとシャボン玉
 
 
みどりがみずみずしく弾く、新春の、少し肌寒く、少し暖かな森の中。
 
コモロは小さな、シャボン玉に出会った。
 
それは青々とした緑をより色鮮やかに反射し、
 
きらきらとゆらめいては、
 
また新たな緑を大空の色と重ねて、
 
うっとりと色を変えるのだった。
 
 
 
そばにあった半透明のふきの葉をちぎりとると、
 
コモロは薄汚れた手のひらで、そうっと慎重にシャボン玉を包んだ。
 
 
 
そうっと、そうっと、壊れぬように。
 
 
 
そうしてできたふきの葉を大事そうに両の手で持つと、
 
コモロは家へと走り出した!
 
 
 
風よりも早く。
 
景色は遠のいて。
 
 
 
コモロは勢いよく家のドアを開けると、
 
ダイニングテーブルの上にそっと丸めたふきの葉をおろした。
 
 
そうして今度は慎重に、あの半透明のふきの葉を開きにかかる。
 
 
 
そうっと、そうっと、壊れぬように。
 
 
 
コモロははっとした。
 
シャボン玉は、消えていた。
 
 
 
つかの間、まるで時間が止まったようだった。
 
 
 
コモロは寂しく、クルルと鳴いた。
 
 
 
シャボン玉は消えた。どこかへ消えた。
 
 
 
あの色鮮やかなシャボン玉は、どこへ消えてしまったのだろうか。
 
コモロはちょっと考えたが、全く想像がつかなかった。
 
 
 
コモロは再び、クルルと鳴いた。
 
今度はちょっと、不思議気に。
 
 
 
そうして窓の外の夕暮れに目を向けると、コモロはひとり、
 
夕食の支度を始めるのだった。

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記憶を失った少年

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■物語り風ショートストーリー
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■記憶を失った少年
 
 
心地よい、水のせせらぎで目が覚めた。
ぼうっとする頭を押さえ、あたりを見渡す。
 
ここは、どこだ?
 
小さな滝が目に入った。
 
どうしてここにいる?
 
覚えているのは記憶の断片ばかりで、
重要な、確かな何かを思い出せない。
 
頭をこすりながら、少年は立ち上がる。
体は重く、久々に歩いたような気分だった。
 
「うう・・・」
 
思わずうめきが漏れ、数歩進んだ足が止まる。
 
見上げた空には太陽が高く上がっていて、どうやら今は昼時のようだ、
とぼんやり思った。
 
周囲を見渡し、自分の荷物らしきものを探す。
 
大振りの、リュックが見えた。
 
少年は少し考え、その荷物を漁ることにする。
自分につながる何かが、あるかもしれないと思った。
 
中には手製の書きかけの地図、不思議な文様の象られたコンパスなど、
おおよそ旅人が持っているだろうものがごろごろと入っていて、
自身につながるものは入っていないようだった。
 
諦めよう、そう思ってポケットに手を当てた瞬間、わずかなふくらみがあるのに気付く。
 
少年はそうっと、ポケットの中身を取り出す。
 
それは、しわくちゃになった1枚の写真。
 
二人の少年が写っている。
 
これは、この景色は、この少年たちは。
 
「あぁ…」
 
安どのため息が漏れる。
 
 
思い出した、思い出したよ・・・
 
「ありがとう、ディン・・・」
 

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謌唄いの詩

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■物語り風ショートストーリー
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■謌唄いの詩
 
 
ショーが始まる。
 
舞台袖の小さな楽屋の大鏡の前で、
謌唄いのリオンはそっと姿勢を正した。
 
鏡に映るその姿を、じっと見つめる。
 
遠い異国の色鮮やかな水色のペンダント。
 
古き民族から貰った、新緑のブレスレット。
 
純白のリングに、渡り鳥をかたどったピアス。
 
どれも黄金色の真鍮に、厳かに飾られている。
 
 
これらは全て、彼女が旅の途中で集めてきたものだ。
 
遠く長い、旅の途中で。
 
 
神秘的なものを纏うと、その香りが立つ。
 
そうリオンは感じる。
 
 
目を向ければその時々の様相が脳裏に浮かんでは消え、
異国の風が頬をなでる。
 
彼女はしばし、その余韻に浸る。
 
 
観客席から歓声が響く。
 
ショーが、始まる。
 
 
リオンはすらりと立ち上がると、舞台への階段を登り始める。
 
異国の優美な、香りを漂わせて。

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風に向かう少女

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■物語り風ショートストーリー
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■風に向かう少女
 
 
吹き付ける轟々という音。
 
体が後ろへと追いやられる。
 
立ち向かわなければ。
 
負けてはいけないのだ。
 
息をするのもままならないほどの威圧。
 
掻き分けるように、もがくように、前へ。
 
苦しい。
 
だが立ち向かわなければならない。
 
終わりもわからぬまま、進まなければならない。
 
じりじりと歩を進める。
 
腰を落としてできうる限り地に寄り添う。
 
指先が、足先が痺れる。目元がかすむ。
 
だが、立ち向かわなければならない。
 
轟音は天高くそびえる山の頂上から、少女の地へと響く。
 

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大空の風

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■物語り風ショートストーリー
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■大空の風
 
 
大空を、大地を駆け抜ける風。
その風にさらされる青々とした大地。
その大地の一角の小高い丘の上に、この一帯を総べる遊牧民の、若者の影がふたつ。
 
二人は抜きぬける風の中、ただただ無言で遠方を臨んでいた。
 
やがて一方が口を開く。
 
「本当に行くのか」
 
そう問われた側が、ちらりと一度視線を向け、
 
「ああ」
 
と応えた。
 
「ヨル、みんなが悲しむ」
 
「構わない」
 
即答され、唇を噛む。重苦しげな表情には、わずかに焦りも見て取れた。
 
再び訪れる沈黙。
 
 
ヨルが口を開く。
 
「ずっと、小さい頃からの夢だった」
 
「小さい頃から、外の世界に憧れていた。あの山を越えた先に何が見えるのか、あの川をくだった先に何が待ち受けているのか、知りたくてたまらなかった」
 
一呼吸おいて相手を見据え、言葉を続ける。
 
「それは、ディン。お前が一番よく知ってる」
 
ヨルと目が合う。そらすことが出来なかった。
 
「俺たち二人ならなんだってやってこれた。今までだって、これからも。だからどこにも行く必要なんてない。どこにも行くな」
 
ヨルの瞳に悲しみが浮かぶ。
 
「…すまない」
 
相棒の決意は固いようだ。ディンは苦しながらもそう感じた。
 
俺は、どうすればいい。どうすれば。
 
ヨルがそっと口を開く。
 
「いずれ、ここへ戻ってくるよ」
 
ヨルの優しさからでた言葉だ。だからこそ、信用できなかった。
 
「ヨル…!」
 
「止めないでほしい」
 
ヨルは悲しげに微笑むと、その一歩を踏み出した。
 
 
大地を、風が駆けた。
二人の間を、どこまでも遠くへ。
 
こらえた涙を頬にこぼしながら、ディンは精一杯叫んだ。
 
「また会おう!また会おう、ヨル!」
 
遠くなった背中が、振り返り、手を振った。
ディンはそれにめいいっぱい両手を広げて応えた。
 
 
大地を吹き抜ける風は、何を運んできてくれるのだろうか。
 
ヨルは何を見、聞くのだろうか。
 
それは二人にはまだ分からない。ディンは願う、願わずにはいられなかった。
風が、全てを運んできてくれることを。

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